諸事情で博士号が取れなかったが、働きながら海外の博士課程に合格した話

2021年2月、諸事情により所属していた大学で博士号が取れそうにない、ということになりました。

思うところがあったため、別の大学、特に海外の大学へ移り研究を続けることにしました。

以下の文章では、2021/3〜2023/3 の2年間をまとめています。

  • 2年ほど会社員として働いた
  • TOEFLの得点 65/120→93/120
  • 海外のPh.D.コースに合格した
  • ハラスメント調査委員会を開いていただいた

以下、順番を変えて詳しく書いていきます。

○TOEFLの得点が65/120→93/120になった話

2021年3月の時点ではアメリカの大学院へ留学することを目標としていました。

そのため、少なくともTOEFLの受験が必要でした。
(どの国の大学院でもTOEFLかIELTSが必要になります。)

なお、COVID-19のおかげ(?)かGRE(共通テストのようなもの)は
1校(UC Davis)を除いて免除されました。

さてTOEFLがどのようなものか体感するため、
勉強を始める前(2021/6/2)に試しに受験してみました。

その結果は65/120というものでした。
(R18/L16/S13/W18)

その後の対策として、まずは公式問題集を使ってTOEFL形式の問題をできる限り解きました。
またスマホアプリ「mikan」を利用したり英単語3800を電車などの移動時間で読んだりすることで、単語を覚えました。

仕事では電車移動の時間があったのですが、その時間はSpeakingの例文暗唱をしていました。Speaking対策として他にもCamblyを利用し、TOEFL対策コースを3周ほどしました。

その他、知り合いの知り合いのイギリス人にお願いして個人レッスンをしていただきました。

またWriting対策としてZ会の添削指導を利用しました。

仕事ではポスティングも行なっていたのですが、その際にはハリーポッターの朗読CDを聴いたりしていました。
この朗読CDのおかげでListeningの点数が一気に上がったように思います。

最終的には93/120点(2022/12/11)を取ることができました。
(R24/L26/S18/W25)
この点数があれば、殆どの大学で足切りに合わない、というところです。

(出願した13大学のうちペンシルベニア大学だけ100/120が必要でした。
今回はペンシルベニア大学の先生二人から推薦を受けていたので何とかなるかなぁ…と淡い希望を持ったりしていました(落ちましたが))

これまで長期留学など集中的に英語を勉強したことはありませんでしたが、日本人としてはそれなりに高い点数を取ることができました。
(この間に英検準一級も取得できました。)

○海外のPh.D.コースに合格した話

博士号が取れないとなった次の日の朝には、フランスでお世話になったことのある先生(フランス人)から励ましのメールが届いていました。

研究室の先輩が僕のことをその先生に報告されたようでした。

親身に相談に乗ってくださるような先生のもとに留学したほうが、得られるものが多いのではと考えるようになりました。

海外の大学院へ出願するにあたって、提出が必要な書類はだいたい次のようなものがありました:

  • Statement of Purpose (SoP、出願エッセイ)
  • CV(履歴書)
  • Research Statement(RS、研究の展望など(無いところが殆ど))

・SoP(出願エッセイ)について

SoPを作成するにあたって、XPlaneのSoP執筆支援プログラムというものを利用しました。

・CVについて

これは外部に委託しました。
日本語の履歴書を送り必要事項を伝えると、数日の間に作成していただけました。
費用は約1万円でした。

・Research Statementなど (出願する大学毎に異なる)

RSについては、学振のために書いていた文章を下書きとし、それを英訳して体裁を整えたものを利用しました。
こちらもXPlaneの支援プログラムの中で添削をしていただきました。

また推薦状については、応援してくださる所属大学の先生をはじめ、これまでお世話になったことのある5名の先生方にお願いしました。

出願した大学は次の通りです:

[U.S.A]
マサチューセッツ工科大学(Zhiwei Yun)
カリフォルニア工科大学(Gukov, Xinwen Zhu)
ペンシルベニア大学 (Donagi, Pantev)
イェール大学 (Shen)
カリフォルニア大学バークレー (Nadler)
カリフォルニア大学デービス(Mulase)
ウィスコンシン大学マディソン (Arinkin, Caldararu)
ノースカロライナ大学チャペルヒル校 (Dumitrescu)
ピッツバーグ大学 (Fedorov)

[Europe]
ボン大学 (Huybrechts)
インペリアルカレッジオブロンドン (Thomas)
ISTA(Hausel)
南デンマーク大学(SDU)(Shende, Du Pei)

それぞれの大学の先生とコンタクトを取った上で
入試委員会の人に私の話をしてもらいました。

ペンシルベニア大学の先生方がとても気にかけてくださって、
僕がメールを送る前に各先生方に推薦文(メール)を送ってくださりました。
また同じ分野の先生方を何人か紹介していただきました。
(Shendeさんもそのうちの一人でした。)

結果としてオファーをいただいたのは南デンマーク大学のみでした。

(ちなみに奨学金も全て落ちました。
ただデンマークの博士課程だと十分な給与をいただけるので特に問題はないです。)

○2年ほど会社員として働いた話

学部生の頃からお世話になっていた塾の教室長さんが独立されており、そちらの会社にお世話にっていました。

個人事業主となり、業務委託として給料をいただいていました。
理由としては、正社員として働いていると殆どの奨学金に応募できないからです。
個人事業主だからといって特に困ることはありませんでした。
もちろん確定申告は面倒でしたが…

勉強時間について、

朝起きてから1時間半
仕事の休憩時間や移動時間で1時間半
夜寝る前に1時間半

は少なくとも確保するようにしていました。

より具体的には

9時起床 朝食など
10時〜12時 勉強
12時〜13時 昼食や準備
13時〜22時 仕事(移動時間/休憩時間などで勉強)
22時30分〜23時 お風呂など
23時〜24時30分 勉強
25時就寝

というスケジュールを2年間続けていました。
(数学も続けていたのでそれなりに勉強時間が必要でした。)

また博士課程は休学していましたが院生室は利用できました。
なので土日は院生室に籠もり、できる限り勉強や留学に必要な作業を行っていました。

社会人という立場を経験できたこと、それなりに成果をあげて会社に貢献できたことは
今後に活かせるのではないかと思います。

(例えばポスティングの仕事として、多いときには月に4000枚のビラを投函したりしていました。
他にも色々な仕事をしましたが、電話対応は上手くなったように思います。)

○ハラスメント調査委員会を開いていただいた話

どれくらい書いて良いか判断が難しいため、具体的な被害を書くことはできません。
行為者からの暴言があり、その他にも気になる点があったため「アカハラではないか?」と思うに至りました。

友人からの助言もあり、すぐに実家に戻り頭を冷やしました。
また、できる限り多くの友人知人に話を聞いてもらいました。

当初は「自分が悪いから…」という思考になっていましたが、
周りの人と話しているうちに「そうでもないかな?」という気分になってきました。

まずは普段からいつでも相談できる人を見つけておくことが大切だと思います。

次に、法学部卒の友達など法律に詳しい知人に相談しました。

その後法テラスを利用し、アドバイスをいただきました。
法テラスとは:国によって設立された法的トラブル解決のための「総合案内所」です。
(出典: 法テラス公式サイト)

大学にはハラスメントに関する規程があり、私の所属していた大学における「アカデミック・ハラスメント」は次のように定義されています:

職員又は学生等が他の職員又は学生等に,優位な立場や権限を利用し又は逸脱して,その指示,指導等を受ける者の向学意欲,労働意欲及び教育研究環境等を阻害又は悪化させる結果となる不適切な言動等を行うことをいう。

弁護士の方からは、この定義に則した主張を行うことが効果的であると教わりました。
(ただし実際に裁判を起こしたとしても得られるものはほとんどないという回答でした。)

起こったことを思い出して嫌な気分になる度に、知り合いの先生方にメールでそのことを報告しガス抜きをしていました。

最初は「よくあることだ」と返ってくるのではないか…と不安でした。
しかしどの先生の返信も「想像以上に酷い」等の内容で、自分の認知の歪みを正すことができました。

ハラスメント相談窓口の先生に連絡を取り、事情を伝えたところ、学内のハラスメント調査委員会を設置していただけることになりました。

結果としては大雑把に

「悪意がなかったのでハラスメントではない」
「指導不足は否めないので、その点については厳重注意処分とする」

という調査結果になりました。

上記のアカデミック・ハラスメントの定義文に「悪意」の有無がないため納得できない結果でした。
しかしそこに拘って時間を浪費するのは無駄だと考え、この件についてはそれ以上言及しないことにしました。

○総括して

  • D進に際して、セーフティーネットをいくつか用意しておく必要があると思います。
    今回僕はバイトや部活を通して会社を経営されている方々と知り合うことができていました。
  • ハラスメントに関しては音声の録音がとても大切なのではないかと思います。
    「これはおかしい」と思ったらスマホなどで録音しておくと良いと思います。
  • 海外の博士課程だと給与をもらいながら研究することができます。
    もしもの際の選択肢としてはそれなりに良いものだと思います。

特に2022年中はacademistさんの月額制クラウドファンディングに大変お世話になりました。
まだ継続中ですので、ご支援いただける方が居られましたら幸いです。

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